身長が低くても不利になりませんか?

 ヨットでは身長が低いことが不利にはなりませんか? 柔道やレスリングのように体重別のクラスが用意されているのでしょうか?

体格に合ったクラス、ポジションがあります。

スナイプ級セーリング競技には、柔道やレスリングのような体重別のクラスはありません。その代わり、様々な種類のクラス(艇種)が存在します。例えば、オリンピックのセーリング競技は、1人乗りから3人乗りまで、全部で9つのクラスが存在します(2008年北京大会当時)。それらは、体格に合わせて用意されたクラスではありませんが、結果としてそれぞれの艇種(クラス)に合った体格というものが存在し、オリンピックを狙う選手は自分の体格に合ったクラスを選んでいます。
470級 インカレでは、470級とスナイプ級という2つの2人乗りクラスが採用されています。それぞれのクラスとポジションで有利となる体格を示すなら、470級のクルーは長身、470級のヘルムスマンは身長は問わずどちらかというと軽量な選手が向いています。スナイプ級のクルーは体重の重い選手、スナイプ級のヘルムスマンは平均的な体格の選手が向いているといえます。

コンディションによって、有利な体格は変わります。


 風の力を利用して進むヨットですが、追い風のコースを採っている限り、乗員の体重が軽い方が有利となります。反対に、向かい風のコースを採っている場合で、なおかつ風が強い場合は、乗員の体重は重い方が有利となります。
 つまりどんな体格でも、それなりに取り組むことができるのがセーリング競技なのです。実際に、現在ヨット部に在籍している選手の体格も大小さまざまです。

 最大公約数的に有利にはたらく体格を敢えて示すなら、細身の長身という体格が、あらゆる状況下で不利になる要素が少ないといえるでしょう。その理由は、ヨットは向かい風の中を走るとき、上の2枚の写真のように風上側に身体を乗り出して風の力に対抗しながら走りますが、そのときにできるだけ外側に身体を乗り出した方が、テコの原理で効率よくヨットを起こすことができるからです。長身の選手は、身長の分だけ外側に乗り出すことができるので、同じ体重で身長の低い選手より効率よくハイクアウト(外側に身体を乗り出すこと)ができます。なおかつ、絶対的な体重が軽ければ、追い風のコースの時にも不利にはならないという理由からです。

長身ならオリンピックを狙うチャンス!?


 オリンピックのセーリング競技で日本がメダルを獲れる可能性があると言われているのが、インカレでも採用されている470級(男女)というクラスで、このクラスでは多くの選手がオリンピックを目指したキャンペーンを張っています。
 ところが、現在この470級で深刻なクルー不足という状況が発生しています。クルーというのは、ヨットの前方でバランスを取るポジションなのですが、オリンピックでメダルを狙うというレベルになると、男子で180cm以上、女子で170cm以上の身長が要求されるのですが、この条件に合うクルーが不足しているという状況が慢性化しつつあるのです。
 クルーというポジションは、フィジカルでテクニカルな能力が要求されるので、セーリングの経験が浅くても、身体能力が高ければ十分にオリンピックレベルにまで到達することが可能です。
 大学からセーリングを始めたような選手でも、4年間大学のヨット部で努力をすれば、国内トップレベルの選手から「いっしょにコンビを組まないか?」と声が掛かる可能性もあります。男子で180cm以上、女子で170cm以上という体格は、他のスポーツに比べたら大した数字ではありません。身長に恵まれているのなら、ヨット部に入ってオリンピックを目指してみるというのも魅力的な選択肢だと思いませんか?